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モビリティ分野における「幸福感」の向上を官民連携で考える! Well-Beingなまちづくりワークショップを開催しました

浜松市では、Well-Being(※1)を感じられるまちづくりを目指し、官民連携でデジタル・スマートシティを推進しています。

※1 Well-Being(ウェルビーイング)|身体的・精神的・社会的に良好な状態を意味する言葉で、ひと言で表現すると「幸福感」を指す。


またWell-Beingを可視化し、市民の幸福感を高めるまちづくりの指標として、「Well-Being指標」というものがあります。浜松市は、Well-Being指標を先行的に活用する分野を4つ定めて取り組んできました。


「交通/モビリティ分野」については、2020年4月1日に、官民連携および異業種連携により推進するため「浜松市モビリティサービス推進コンソーシアム」を設立。地域における移動手段の確立などを通じ、持続可能な都市づくりに取り組んでいます。

2023年4月25日(火)には、「交通/モビリティ分野」からWell-Beingの向上を考えるワークショップを開催しました。この記事では、浜松市が官民連携でまちづくりを進める背景とともに、ワークショップ当日の様子をお伝えします。

心の豊かさが求められる時代、今、求められるまちづくりのビジョンとは?



国は「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、デジタルの力によって、地域に暮らす人々の心ゆたかな暮らしの実現と地域課題の解決を目指しています。構想の中では「心ゆたかな暮らし」つまりWell-Beingの充実を目標としたまちづくりを重視していますが、これはなぜでしょうか?

日本独自のWell-Being指標の開発・普及に取り組む一般社団法人スマートシティ・インスティテュートの専務理事であり、浜松市のフェローを務める南雲岳彦さんから、説明がありました。


「高度経済成長期を経て、日本の経済的な豊かさは大きく向上しました。しかしながら、生活の満足度は高まらず、若干ながら低下傾向にあります。さまざまな研究・調査から、所得が人生の満足度に与える影響には限界があることも分かってきました。


そのうえ日本は、人口減少社会に突入しています。そうした背景から、いま求められるのは、地域の人々が幸福に暮らせるまちづくりだといえます。デジタル・スマートシティを推進する上でも、施策が市民の幸福度に貢献しているかどうかが重要です。そこで、地域の人々のWell-Beingを高めるまちづくりが重視されているのです」

5チームに分かれてワークショップ! Well-Being要素の洗い出しとシナリオを作成



ワークショップでは、市民のWell-Beingにつながる要因を掘り起こし、モビリティによってどのようにWell-Beingなまちづくりが可能になるか、シナリオを作成していきます。ワークショップの参加者は5チームに分かれ、それぞれに設定された市民像の立場になって意見を出し合いました。



各チームの発表内容は、以下のとおりです。

グループA:
市民像は、30~40代の子育て世代です。8歳(就学児)と5歳(未就学児)の子供がいる共働きの世帯を想定しました。

この世代にとっては、「子供/家族と一緒にいる時間をどう創出するか」がより根源的なテーマだと仮定しました。そのため、「子供が喜ぶイベントに参加できること」や「入学式や卒業式などの晴れ舞台を見守る」ことなど、具体的な行動要因を実現できる環境面の整備が求められます。育休・産休の取りやすい職場環境や、送迎時間・通勤時間の短縮、子供を見てくれる地域コミュニティなどが整うと、当市民のWell-Beingな暮らしが叶えられるかもしれません。


グループB:
市民像は、未就学児のいる30~40代の子育て世代です。子供がまだ幼く、成長が楽しみな年齢である一方、親は目が離せません。そこで、メインテーマを「家族との過ごし方」に設定しました。

幼い子供と過ごすシーンを考えてみると、さまざまな課題が挙がりました。なかでも外出シーンにおいて課題が多くみられます。例えば自動車のなかで完結できる要素を増やすなどして、外出中に感じるストレスを軽減できれば、未就学児のいる親世代のWell-beingを向上できるかもしれません。


グループC:
市民像は、中学生のお子さんを持つ30~40代の子育て世代です。子供が親の手を離れて行動するようになる年齢なので、もっとも大事なのは、地域の安心・安全だと考えられます。

安全に登下校ができること、安全に習い事や遊び場に行って帰宅できること。そうした地域の安全・安心を考えるなかで、「地域で支える子育て環境」というメインテーマが見えてきました。浜松市では、約95%の市民が自治会に加入しています。浜松まつりをはじめ、地域とのつながりを感じられる文化もあります。

そうした環境特性を生かして、地域の大人が地域の子供を育むような地域コミュニティを強化できたら、Well-beingを高めていけるでしょう。また、そうした地域づくりにおいては、モビリティの拡充よりも、大人たちが地域の子供を実際に目にしてサポートできるような仕組みが求められると考えました。

グループD:
市民像は、自動車を通勤手段としている「通勤者」です。さらに市民像を深堀りし、製造業企業で事務スタッフとして働き、二児の子育てに励む30代女性を想定しました。

具体的な市民像から見えたテーマは、「安心」と「リラックス」です。例えば、安全に保育園や幼稚園へ送り迎えできるインフラが整えば、当該市民のWell-beingが高まるといえます。子供を送り届けたあとに、ようやく自分のための時間が確保できます。例えば、帰りの寄り道など、自分の時間を心からリラックスして楽しめることにモビリティ(自動車)が寄与できれば、Well-Beingの向上につながるかもしれません。


グループE:
市民像は、郊外に暮らす80代女性の「免許返納者」です。一人暮らしであり、家から公共交通機関の駅へのアクセスが困難な方を想定します。メインテーマに挙げたのは、「人とのつながり」でした。例えば、話し相手がいることや、誰かの役に立っていると感じられること、などです。

言い換えると、孤独を感じさせない地域づくりが重要であり、そのためにも人とつながるための移動手段の改善がWell-beingの向上につながると考えました

「機能に偏っていた自社サービスを見直す機会に」参加者インタビュー



モビリティの観点から、官民連携でWell-Beingなまちづくりについて考えた今回のワークショップ。参加した企業・団体の皆さんは、どのような気付きを得たでしょうか? 3名にお話を聞きました。


東京海上日動火災保険(株)デジタルイノベーション部 部長 平山寧 氏:
さまざまな業種の方が、ビジネスの枠を超えて市民の立場としてWell-beingの向上について議論でき、とても有意義な場だったと感じます。具体的な市民像とWell-Beingを向上させるストーリーがイメージできて、次につながる実感が得られました。この経験を生かして、我々もまちづくりの色々な面で貢献していけたらと思います。次回のワークショップにも期待しています。


認定NPO法人はままつ子育てネットワークぴっぴ 藤田麻希子 氏:
市域が広い浜松市では、どこに住んでいるかによって、Well-Beingの度合いや暮らし方の特徴が大きく異なると感じます。一人ひとりの希望が異なるなか、意見を集約してまちづくり施策やサービスのかたちにしていくには、民から官に声を届ける必要があります。一方で、都市運営上のルールやインフラなどを整備するには、官の力が必要です。官と民のどちらかだけではWell-Beingなまちづくりの実現は難しく、今日のように官民連携で未来をつくり上げる重要性を改めて実感できました。


(株)杏林堂薬局 地域医療連携推進室 シニアマネージャー 河合幸久氏:
私たちはこれまでも、移動診療車によるオンライン診療の実証実験や、移動スーパーの取り組みをはじめ、市の課題解決に携わらせていただきました。しかし、今思えばそれらの取り組みは「どうやって買い物の機会や物資を届けるか」という機能面に寄っていました。

今後は「好きな商品を選べる喜び」や「リラックスできる店づくり」といった、Well-Beingの向上につながる取り組みも模索していきたいと思います。皆さんの意見から事業に関する新たなヒントを得られ、有意義な時間でした。


本ワークショップで作成したシナリオは引き続きモビリティコンソーシアムで取り上げ、具体的なサービスの検討に活用していく予定です。

また、本ワークショップの内容は、市民参加型の合意形成プラットフォーム「Decidim(デシディム)」上で公開し、随時、更新しています。ご興味のある方は、以下のURLより対話の場にぜひご参加ください。




浜松市とともにデジタル・スマートシティの取組を推進する事業者を募集中

浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォームは、官民連携でデジタル・スマートシティ浜松の取組を推進していくプラットフォームです。本プラットフォームでは、デジタルを活用し、市民生活の質の向上や地域課題の解決に一緒に取り組んでくださる事業者の皆さんを募集しています(参加無料)。

ぜひ以下のページよりご参加をご検討ください。


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