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【後編】浜松市では、官民連携でデータ連携基盤を活用したサービスの実装に取り組んでいます!

この記事では前回に引き続き、2022年度に浜松市とともにデータ連携基盤を活用したサービスの実装に取り組んだ4社について紹介します。後編となる今回は、株式会社オサシ・テクノスと、株式会社フジヤマを紹介します。

【前編】では、笑顔で寄付が巡る仕組みづくりを目指すOne Smile Foundation(ワンスマイルファンデーション)と、河川に流出する人口系ごみの実態把握によりプラごみゼロのまちを目指す八千代エンジニヤリングの取り組みをレポートしました。こちらよりご覧ください。

データ連携基盤とは?
データ連携基盤とは、行政データ、民間保有データ、センサーデータなど、さまざまなデータをかけあわせ、官民がともに利活用できるようにする中核となるシステムであり、地域の課題解決や活性化に繋がるサービス創出への活用が期待されています。
浜松市では2022年度、データ連携基盤を活用したサービスの実装に向けて取り組む民間企業などに、その必要経費を補助する「データ連携基盤活用サービス実装支援補助金事業」(以下:データ連携基盤活用事業)を実施しました。


日々のデータ観測を可能にし、中・長期的視点で防災・減災に必要なサービスを考える

近年、気象災害は増加の傾向にあります。浜松市においても台風や大雨などにより複数の地域で冠⽔や土砂くずれなどの被害が確認されています。

しかしながら、災害の発生メカニズムは判明していない場合が多くあります。そのため防災活動につなげるのが難しい状況にありました。

河川や森林、斜面などの要所において、水位や傾斜などの状況変化を継続的に観測し、取得したデータを災害分析に役立てる必要性が高まっています。こうした中、2022年度のデータ連携基盤活用事業では、4社のうち2社が、市の防災・減災に寄与するサービス開発を進めてきました。


防災用計測システムの先進企業が手がける「市街地の冠水予測サービス」|株式会社オサシ・テクノス

いつ、どこで発生するか分からないからこそ、起きた時点の状況を捉えづらいのが災害です。そのため、常に自然や地域の状況を記録しておき、災害が起きたときには記録を振り返ってその原因を探ることが必要になります。

水位計やカメラを利用したIoTシステムで、市街地に迫る水害の危険を見える化する「冠水予測サービス」を開発しているのが株式会社オサシ・テクノス(本社:高知県高知市、以下:オサシ・テクノス)です。

オサシ・テクノスは、高知県に本社を置く防災用計測機器メーカー。水位計・雨量計・伸縮計などの製造・販売をはじめ、機器の設計やレンタル、設置施工、保守点検まで手掛けています。47都道府県すべてに納入実績を持ち、国土交通省のプロジェクトにも参画しています。


浜松市とのデータ連携基盤活用事業では、河川の異変を捉える計測機器の開発・保守を手掛けてきたノウハウをもとに、河川の水位計測システムを開発してきました。洪水が発生する兆候を捉え、市街地において浸水の危険が及ぶエリアを予測するサービスの展開が期待されています。

開発に先立ち、2021年度の浜松市データ連携基盤活用モデル事例創出事業「Hamamatsu ORI-Project」(読み方:ハママツ・オリ・プロジェクト、以下:ORI-PRO)に参加し、リアルタイムな河川の水位計測に取り組みました。過去に冠水が多発したエリア付近の川沿いに、水位センサー4機と冠水センサー4機を設置。水位と雨量を10分おきに計測し、まちの高低差データと掛けあわせることで冠水を予測するシステムを試験しました。


取り組みの結果、冠水予測は成立し、地図アプリ上に冠水予測エリアを表示することができました。検証中に取得した水位と雨量のデータ、および冠水の予測データは、データ連携基盤上に登録できました。


その後、2022年のデータ連携基盤活用事業では、水位計測システムのサービス化を進めました。計測機器は、よりコンパクトな超音波式に変更。通信機能と電源も兼ね備えた実機が完成しました。

さらに、予測情報の正確性を確かめるため、より長い期間にわたり水位データを収集し続けています。取得した水位データに、浜松市が持つオープンデータを組み合わせるなどして、冠水予測の精度を高めるための複合的な分析を行っていきます。


誰もが緊急時に適切な行動が取れるように、冠水予測のサービスを実現したい

未来創造部部長の古島広明さんに、本事業に参画した感想を聞きました。

現場で観測中の古島さん

――どのようなきっかけで、本事業に参画しましたか?

古島さん:洪水が起きる可能性をタイムリーに検知し、住民のみなさまに通知するサービスが作れたら……という想いが以前からあり、本事業に参画させていただきました。
洪水や冠水の被害にあった方が、「ひざまで水が来たと思ったら、間もなく水位が腰まであがり逃げられなかった」とインタビューで答えているのをよく見かけませんか? それは、浸水の脅威が身近に迫る前に、たとえば上流から大量の水が流れ込んできていることや、堤防が決壊したことなどを知る手段がないからです。
実は、これまで防災用の計測器は、人が暮らすまちなかに設置されることがあまりありませんでした。今回は、市街地の高低差データを河川の水位データとかけあわせ分析することで、住民のみなさまの生活を妨げることのないコンパクトな冠水予測システムが実現しました。万が一のときに適切な行動を起こすきっかけを掴めるようなアプリケーションが仕上がったと感じます。


――全国47都道府県にサービスを展開しているオサシ・テクノスですが、とりわけ浜松市で実証実験を行ってよかったことはありますか?

古島さん:計測システムの設置場所を、すべて浜松市が所有・管理する河川や周辺設備に絞っていただいたお陰で、実証実験そのものが可能になりました。水位計を取り付けられる箇所は、実はそんなに多くありません。電源をどこから取るかという問題がありますし、人や車の通行の妨げになってはいけないからです。浜松市の全面的な協力があってこそ、叶えられた実証実験だったと感じます。

――今後はどのように展開していきますか?

古島さん:確証を持って届けられる予測データとなるよう、もうしばらくデータの蓄積・分析を重ねたいと考えています。そうした思いにも、浜松市は積極的に耳を傾けてくれるのでありがたいですね。
予測の精度が検証できれば、データ連携基盤上に登録されるあらゆるデータとの連携も進めていけます。たとえば交通情報と連携することで、冠水時により安全な迂回ルートを提示したり、避難所データと連携して避難所までのより安全なルートを提示したりといったサービスも検討できるでしょう。
一方で、冠水の危険を住民のみなさんにどのタイミングでどう伝えるのかは、非常にセンシティブな課題です。最終的な予測データの扱い方については、浜松市と対話を重ね最適な活用方法を見出していきたいと思います。


増え続ける大雨による被害を軽減し、まちの安心安全に寄与する斜面のモニタリングシステムを|株式会社フジヤマ

建設総合コンサルタントの株式会社フジヤマ(本社:静岡県浜松市、以下:フジヤマ)は、1967年に測量業として浜松市利町(とぎまち)で創業した老舗企業です。現在は事業の幅を広げており、自治体案件を中心に、測量・調査や地理情報処理、建設コンサルティングなどを手掛けています。

フジヤマの業務領域 
引用:フジヤマHP「建設コンサルタントとは?」ページより


そんなフジヤマが向き合うのは、近年、中山間地域に被害をもたらしている大雨・土砂災害の課題です。斜面林のデータを計測し、土砂災害発生の早期発見と迅速対応に役立つ「斜面変位の簡易監視サービス」の開発を進めてきました。


斜面の微細な変位をとらえる振動センサーを開発し、斜面の変位をリアルタイムにデータ収集し、異常値が確認された際に通知が届くシステムを構築しました。これにより、観測斜面の継続的なモニタリングおよび、変位の早期発見と迅速対応を可能とする仕組みを整えました。


地元に負担の少ない形で防災の仕組みを整えたい、将来は市街地でも使いやすいサービスへ

1年におよぶ実証実験を終えた感想を、営業部次長の山浦篤さんに聞きました。

実証実験中の様子と山浦さん


――どのようなきっかけで、本事業に参画しましたか?

山浦さん:当初は、斜面林の3Dデータ計測による林道管理の効率化支援を進めるべく、ORI-PROに申し込みました。実証中に使用する中でとくに有用性を発揮したのが、斜面の変位を計測できる振動センサーです。
実はこれまで、斜面の変位計測には、ドローンやMMS(※)を利用するのが主流でした。ただ、ドローンやMMSを何度か現場に持ち込んで作業を行う必要があり、データ計測と解析には最低でも半年から1年の期間がかかります。さらにデータ計測と解析は高額なうえ、長期的な観測やミリ単位の変異計測が難しいのが課題でした。

※MMS|モービルマッピングシステムの略。カメラと3次元レーザー計測器を搭載した移動体。



その一方で、1975年以降、短時間降雨の回数は増加の一途をたどっています。私たちの地元、浜松市でも、大雨による被害が増えました。中山間地域における土砂災害の被害を軽減するために、振動センサーが応用できるのではないか? そうした発案から、2022年度のデータ連携基盤活用事業に応募し、振動センサーを用いて斜面の崩壊や滑落の兆候を1ミリ単位でリアルタイム計測する実証実験に取り組むことになりました。

結果として、24時365日斜面の状況をモニタリングでき、費用も従来の方法と比べて5分の1以下に抑えられる振動センサーを開発できました。斜面変位の異常値を観測した際にデバイスに通知を届ける「斜面表層崩壊モニタリングサービス」として、商品化を目指しています。

危険が予測される200~300平方メートルの範囲内に2~3機の振動センサーを設置し、モニタリングを行う。フジヤマが培ってきた斜面の管理・防災ノウハウを生かすことで、振動センサーの効率的な設置・運用が行える。


――ORI-PROとデータ連携基盤活用事業を通じて実証実験を行ってきて、よかったことはありますか?

山浦さん:静岡大学の木谷友哉准教授との連携により、深く実証実験を行えたことです。木谷准教授が実証を進めるGPSセンサーと、弊社の振動センサーが取得した変位データを突き合わせることで、両者のデータの正確性を高められました。お陰で振動センサーの品質が向上し、製品化も間近というところまで開発を進められました。

――今後はどのように展開していきますか?

山浦さん:今後は、データ連携基盤を通じて、振動センサーから取得するデータを、浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォームの参加会員のみなさんに使ってもらえるよう整備していくほか、水位や気温、交通量など、あらゆるデータとも連携を進めます。宅地のすぐ裏にある法面(のりめん)など、市街地でも弊社の振動センサーを活用できるようになれば、都市機能の向上に繋がり、経済効果も期待できるかもしれません。
災害発生時の避難や救出対応については、綜合警備保障株式会社(ALSOK)様との連携協議が進んでいます。オープンな場だからこそ各社と協力できるのが、ORI-PROやデータ連携基盤活用事業の大きなメリットですね。私たちはこれからも、デジタル・スマートシティの実現に技術力で応え、市民のみなさまのWell-being向上にも寄与していきたいと思います。


さいごに

前編、後編にわたって、データ連携基盤活用事業に採択された4社の取り組みを紹介しました。地域の課題解決や活性化に繋がるサービスを作り出すために、引き続き取り組みを進めていきます。


浜松市とともにデジタル・スマートシティの取組を推進する事業者を募集中

浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォームは、官民連携でデジタル・スマートシティ浜松の取組を推進していくプラットフォームです。本プラットフォームでは、デジタルを活用し、市民生活の質の向上や地域課題の解決に一緒に取り組んでくださる事業者の皆さまを募集しています。

ぜひ以下のページよりご参加をご検討ください。
浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォーム

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