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地域猫活動に取り組んでいる自治会を取材しました

広報はままつ2024年5月号では、野良猫を減らすために地域猫活動に取り組んでいる浜松市内の自治会を取材しました。地域猫活動とは、飼い主のいない特定の猫を、地域の理解と協力を得て飼育管理する取り組みのこと。これ以上増えないよう不妊手術を行い、一代限りの生を全うさせます。適正な餌やりや猫用トイレの設置により周辺の生活環境の悪化を防ぐ効果もあります。

自治会単位で地域猫活動に取り組んでいる自治会は、市が把握している範囲で市内数カ所程度です。なぜ自治会で取り組むことにしたのか、また、活動の効果や自治会で取り組む良い点とは。広報に載せきれなかった内容を含め、インタビューの様子を紹介します。


インタビュー相手の石川和男さん(新津町しんづちょう自治会会長)と片橋幸夫さん(茄子町なすびちょう自治会副会長)※2024年3月時点の肩書き


猫の問題を人の問題と捉えて、地域で取り組む


──どのようなきっかけで地域猫活動を始めたのですか?

石川さん 町内で猫の多頭飼育崩壊が起こり、異臭などのトラブルにつながったことがきっかけの一つです。私もその現場に行ったのですが、猫たちも幸せとは言えない状態でした。猫の問題を人の問題、地域の課題と捉え、不幸な猫をこれ以上増やさないための話し合いを自治会で続けました。

そんな中、以前から町内で地域猫活動をしているボランティアさんたちが手術代を自己負担していることを聞き、それならば自治会で組織的にやってはどうかと検討していきました。自治会の役員総会で全員の賛成を得て、2021(令和3)年1月から地域猫活動を始めました。どのくらい効果があるかはやってみないと分からない面もありましたが、とにかくボランティアさんと一緒にやってみようということでスタートしました。


片橋さん 私の町(茄子町)は新津町の隣にあるのですが、あるとき、茄子町の野良猫を新津町の人がボランティアで捕獲してくださっているところを見掛けまして。茄子町の野良猫対策費用を新津町の人に出してもらうのが申し訳ないと思ったのがきっかけです。

近所の人と話す中で、新津町では自治会で地域猫活動をしているらしいということを知りました。また、以前から複数の茄子町民に「自治会で野良猫対策をしてほしい」と言われていたこともあり、野良猫を減らすために茄子町でも地域猫活動をやってみることにしました。新津町自治会やボランティアさんにノウハウを教わりつつ、茄子町自治会では2023(令和5)年の夏から活動を始めました。


──普段はどんな活動をしていますか。また、どのような効果がありましたか。

石川さん 普段は町内への回覧板で地域猫活動について周知し、野良猫(飼い主のいない猫)の情報を募っています。野良猫がいることを把握したらボランティアさんに協力してもらいながら捕獲します。そして不妊手術を行い、地域へ放し、餌やりさん(餌をやる人)を決めて、猫が一生を終えるまで地域で管理します。

ときには自分の家で飼いたいという人が名乗り出てくれる場合もあります。新津町自治会で手術したのは3年間でおよそ50頭。手術した猫の数は、始めた年が一番多く、徐々に減少してきました。町内で見掛ける野良猫の数も減っています。今のところ成果は上がりつつありますが、油断するとまたすぐ増えてしまうので、アンテナを高くして地域の猫情報を得るようにしています。


片橋さん 茄子町自治会で手術した猫の数は半年間で14頭です。長期的な視野をもった活動だということを地域の人たちに理解してもらうことに苦心していますが、活動を行っている際に町民から直接「ありがとう」と声を掛けてもらえることもあり、理解が広がっていると感じています。


──費用面で工夫していることはありますか?

片橋さん 茄子町では、活動費用を自治会費から出すだけではなく、町内からの有志の寄付も募っています。ひと口1000円という少額に設定しています。これは、動物病院の獣医師におすすめしてもらったやり方です。


石川さん 新津町では、自治会費の中で野良猫対策費を独立した費目として設定し、予算を計上しています。実際にいくら使ったかも報告しています。野良猫が減るにつれて費用負担は減ってきています。


──自治会で地域猫活動に取り組むメリットはどういうところにあると思いますか?

石川さん 費用を公から出すので個人の負担が減ることと、町の人にも「自治会がやっているならば」と活動に賛同してもらいやすいのがメリットです。地域の問題を解決していくという点で、自治会で組織的に動くのがいいのではないかと思っています。


──3年間にわたり活動を続けてきた新津町自治会では、野良猫の数が減ったこと以外に、地域猫活動を続けて良かった点はありますか?

石川さん 地域コミュニティが活発になり、子ども食堂を新たに始める動きなども生まれてきているところが個人的にはうれしいです。動物に優しいまちづくりをすることで、人にも優しい町民がさらに増え、住みやすいまちになるといいなと思います。他の地域でも地域猫活動が広がっていったらうれしいです。


取材を終えて

快く取材に応じてくださった石川さん、片橋さん、ありがとうございました。また、取材当日は新津町のボランティアさんにも同席していただき、野良猫の捕獲や普段の世話などについての話をお伺いしました。

取材時、ボランティアさんに見せていただいた猫の捕獲器。猫が針金で傷つかないようなタイプの捕獲機を使用しているとのこと。

地域猫活動を自治会で取り組む前例が少ない中で、専門家に相談しながら地域に合わせた方法を模索し、実際に野良猫の数が減るまで活動を続けてこられた2自治会。熱意と実行力があったからこそ実現できたのではないかと感じました。ぜひ他の地域でも参考にしていただけたらと思います。

浜松市では、野良猫の不妊手術事業を実施しています。市・参加動物病院・市民の皆さんが協働(費用を負担)して、野良猫の不妊手術をします。詳しくは、浜松市動物愛護センターのホームページへ。地域猫についても紹介しています。

★浜松市動物愛護センターホームページ(トップページ)


★地域猫について


文:広報はままつ編集メンバー

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