“申請書を書かない窓口”の開始により、来庁者にやさしい窓口へ
浜松市は、2023年2月24日(金)から、各区役所や協働センターなど市内の58か所の窓口において、住民票の写しなどの証明書発行の手続きで「書かない窓口」の運用を始めました。
市民の皆さんが申請書類に氏名や住所などを書かずに手続きできるようにする「書かない窓口」。これまで10分ほどかかっていた証明書類の発行時間は、約6分にまで短縮されます。記載台で申請書類を探して必要事項を書く必要がなくなり、窓口で身分証明書を提示いただいたあとは職員が必要事項を聞き取り、システムから必要なデータを引き出して自動で転記することで申請書の作成を支援する流れになったためです。
これにより、市民サービスの向上につながるほか、手書きの書類を扱う必要がなくなり、窓口業務の負担も軽減されます。まさに市民にとっても職員にとってもうれしいデジタル化が叶いました。
この記事では、浜松市役所で「書かない窓口」がスタートした背景やスタート当日の様子などをお届けします。
身分証明書を提示するだけで住民票などの証明書が発行できる!浜松市で始まった「書かない窓口」とは?
入学や就職の季節になると、学校や職場などに提出する住民票などの書類を求め、市役所へ来られる人が多くなります。
ピンク色や黄色、青色......と、証明書の種類ごとに色が分かれた申請書類。適切な申請書類を探し出し、また、証明書が複数ある場合は、申請書もそれぞれに記入してもらう必要がありました。
浜松市で運用がスタートした「書かない窓口」では、このような記入の手間はもう必要ありません。マイナンバーカードをはじめとする身分証明書があれば、申請書を書かなくても窓口で証明書を受け取れるようになったためです。
申請書の記入から受け付け、証明書の発行まで、これまで10分ほどかかっていましたが、「書かない窓口」では約6分にまで短縮されます。
それでは、来庁者の申請手続きは、どのように変わったのでしょうか? 以下に、流れを説明します。
今までのように記帳台で申請書類を書く必要はなくなりました。来庁者は、窓口で受付番号を発券し、番号が呼ばれたら窓口に直接行けば大丈夫です。職員に身分証明書を見せると、職員が必要事項を聞き取りながらシステム上で申請書類を作成します。システムから印刷された申請書の内容を確認し、署名するだけで、証明書の発行手続きが進められます。
対応業務は今後拡大する予定です!
2月24日のサービス開始時点では、住民票の写しや身分証明書など29種類の証明書類が「書かない窓口」で受け付け可能になりました。
さらに2023年6月には、届出手続きに関する書類の受付も「書かない窓口」の対象となる予定です。例えば、転入や転出の住民異動届や、それに伴う健康保険・介護保険の手続きなども、“書かずに”申請いただけるようになります。
ここまで聞くと、「便利なサービスだけれど、実施場所は区役所など、一部の施設だけなのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。今回、「書かない窓口」は、各区役所や協働センターなど市内の58か所で一斉にスタートしました。
各区役所:7カ所
協働センター:34カ所
市民サービスセンター:9カ所
ふれあいセンター:7カ所
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市内の各センターでも対応することで、より利便性を高めていけたらと考えています。
人口約80万の政令指定都市で、デジタル化を進めるには?度重なる検討により実現できた「書かない窓口」
ここからは、浜松市で「書かない窓口」がスタートした背景についてお伝えします。
実は、浜松市は全国に先駆けて1994年(平成6年)から「総合窓口体制」を採用している自治体です。総合窓口体制とは、転出や転入の手続きと社会保険などの手続きを、1カ所の窓口でワンストップに完結できる仕組みのことです。
しかし、その運用には、どんな手続きにも対応できる職員が必要となっていました。1人の職員が多くの手続き業務や関連法令を覚え、さまざまな窓口業務に対応できるようにならなければいけないためです。
浜松市における総合窓口の対応は、市民サービスの向上のため全国に先駆けて取り入れた仕組みであり、2005年の市町村合併時もその対応を引き継いできたものです。世の中の変化によって対応業務が複雑で増えていっても、総合窓口体制を継続していけるように、この総合窓口の対応を効率化する仕組みを検討してきました。
そんな中、2021年12月にデジタル庁の牧島前大臣が北海道北見市の「書かない窓口」を視察し、自治体におけるデジタル活用の好事例として紹介したことが、新聞など複数のメディアで報じられ全国的に注目を浴びました。
こうしたことを背景に、本市でも北見市をモデルに、またデジタル田園都市国家構想にもとづき交付金(※)も活用しながら、「書かない窓口」を導入することになりました。
「北見モデル」は、申請書に記載するデータを住基システム等から引用するため正確性が高く、複数の仕組みによって情報セキュリティを担保できるのが長所です。職員が目にする画面上には、申請書類作成にともなう手順や入力項目がナビゲートされる機能も付いています。これにより、いわゆる“スーパーマン型”の職員以外でなくとも窓口業務に対応できるようになります。
また今回、「ユーザー視点」を意識して取り組みました。例えば、証明書発行の窓口であることが伝わりやすいよう、窓口の足元を埋めていたポスター掲示を思い切ってゼロにしました。このように小さな変化ではありますが、ユーザー視点で利便性向上に取り組んだことも、今回のチャレンジとなっています。
人に寄り添ったデジタル化を進め、便利で快適な市民サービスを実現したい
行政サービスのデジタル化と聞くと、「将来的に全てのサービスが、オンラインでなければ受けられない時代になってしまうのでは?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
市民の皆さんのニーズが多岐にわたる中、浜松市では、「人に寄り添ったデジタル活用」を進めています。
これは、デジタルを活用し市民サービスの利便性を高める一方で、デジタル機器の操作が難しい方にはこれまで通り窓口で職員が丁寧に対応するなど、それぞれに快適な市民サービスを提供していくという考え方です。
例えば証明書の一部は、現在、マイナンバーカードがあればコンビニでも交付手続きができるようになりました。急いでいる方や窓口の閉まっている時間帯に利用したい方などはコンビニで。窓口でのサポートを必要としている方は窓口で、といったように、市民の皆さんがそれぞれに適した方法を選べることが、市民サービスの向上につながるという考え方です。
「時間がかかると覚悟してきたが、早くて便利だった」、書かない窓口を体験した感想を聞きました!
「書かない窓口」のサービスを受けた市民の方は、どのような印象を持ったのでしょうか? 「書かない窓口」で実際に証明書の交付を受けた方に感想を伺いました。
50代女性:息子の大学進学に伴い、住民票などの証明書類を取得しにきました。時間がかかると覚悟して、余裕をもって来庁しましたが、まさか身分証明書を提示するだけで手続きが進められるようになったとは……!
申請から受領まで、とても早くてビックリしました。トータル5分ほどで書類を受け取れたように思います。
40代男性:これまでは申請書類の記入がおっくうでしたが、職員の方がシステムを使って作成してくれるので楽になりましたね。記入ミスもなくなりますし、待たなくて済むようになったのは便利だな、と感じました。
人にやさしいデジタル化に向けて
浜松市の「書かない窓口」は、大きなトラブルもなく無事にスタートできました。最後に今後の展開について、担当職員に話を聞きました。
浜松市担当職員:今後は、マイナンバーカードの利活用まで視野に入れ、市民サービスの向上に取り組んでいきたいと思います。国がデジタル化を進めているため、マイナンバーカードがあれば発行・完結できる行政手続きの項目がさらに増えていくと予想されます。
一方で、職員の対面によるサポートを必要とされる方もいらっしゃいます。全ての手続きがオンラインで対応できるわけではありません。そのため、行政手続きのオンライン化やコンビニ交付といった「行かない窓口」に加え、来庁者にやさしい「書かない窓口」を拡大していきたいと考えています。
これからも「市民の皆さんに寄り添ったデジタル活用」を目標に、市民サービスの向上と業務効率化を進めていきます。
浜松市とともにデジタル・スマートシティの取組を推進する事業者を募集中
浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォームは、官民連携でデジタル・スマートシティ浜松の取組を推進していくプラットフォームです。本プラットフォームでは、デジタルを活用し、市民生活の質の向上や地域課題の解決に一緒に取り組んでくださる事業者の皆さんを募集しています。
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