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浜名湖花博2024|はままつフラワーパーク会場の新ガーデン「はなのはら」を監修した小倉珠子さんへのインタビュー

2024年春に浜名湖ガーデンパークはままつフラワーパークで開催する「浜名湖花博2024」(以下、花博)。広報はままつでは、開催直前の2024年3月号で花博の紹介記事を掲載しました。その中で、はままつフラワーパーク会場に新しく誕生するガーデン「はなのはら」のデザイン・監修をされたガーデンデザイナーの小倉珠子たまこさんにインタビューしました。はなのはらのキーワードは、「サステナブル」「生物多様性」───。具体的にはどのような考え方でデザインされたのでしょうか。スペースの都合で広報はままつに掲載できなかったお話も含めて、この記事で紹介します。

「はなのはら」イメージパース。やさしく花々が風にそよぐ野原のようなガーデン




宿根草しゅっこんそうを中心としたサステナブルなガーデン


ガーデンデザイナー 小倉珠子さん


小倉さんにはまず、新ガーデン「はなのはら」の特徴を伺いました。

小倉さん「はなのはらは宿根草球根といった寿命の長い植物を中心として、芽吹きから蕾の時期、開花期、種をつけて枯れゆくまでの“植物の四季折々の姿”を鑑賞したり、毎年育っていく様子を楽しんだりするガーデンです。

一般的に草花というと一年草の印象が強く、開花の華やかさを楽しむものと思われがちです。開花期を過ぎると生涯を終える一年草の場合は年に数回、苗ごと抜きとって植え替える必要があります。一方、はなのはらは基本的には大きな植え替えをせず、秋に補植する程度です。

このため、全ての花が同時期に咲いて終わるのではなく、長い期間楽しめるように開花期が異なるさまざまな種類を組み合わせています。穂などが美しい丈夫な草なども使っているので、花に埋め尽くされたガーデンというよりも野原に花が咲いているような、自然の雰囲気に近い花景色を作っています。一般的なガーデンや花壇のイメージとは異なりますが、草花を使って作る風景の、これからのスタイルの一つだと思って見ていただけるとうれしいです。

季節ごとに咲くいろいろな種類の植物を植栽することで植物相しょくぶつそうが豊かになるため、さまざまな生き物が生息する場所にもなります。こうした宿根草によるサステナブルな(持続性の高い)ガーデンを作ることは、今、世界的な動きの一つになっています」

はなのはらの植物は、夏の暑さに強いものなど浜松の気候に合うものを選んでいる、と小倉さん。「市販されている宿根草は、涼しい気候に向くものも含まれているため、浜松の暑い夏を越せなかったりして苦手意識を持っている人もいるかもしれません。比較的、浜松でも育てやすい植物を主に使っているので、庭作りの参考にしてほしいです。もちろん一年草と組み合わせるのもおすすめですよ」と語ります。

宿根草についてさらに詳しく伺いました。

小倉さん「宿根草の中には、シャクヤクアヤメなど皆さんのよく知っている植物もあるのですが、宿根草という言葉自体あまり認知されていないのではないでしょうか。環境に合う種類を選べば植え替えなくても毎年花を咲かせ、水やりや肥料も比較的少なくてよいというメンテナンス面のメリットもあります。はなのはらでは、日本に昔からある宿根草なども織りまぜて、いろいろな種類の宿根草を使い、宿根草の魅力を伝えたいです」

訪れる日ごとに印象が変わる

ガーデンの鑑賞におすすめの時期があるのかどうかをお聞きしました。

小倉さん「見頃の植物が入れ替わっていくように計画しているので、いつ来てもらっても大丈夫です。60〜70種類ほどの植物をまぜて植えており、例えば10日ごとに足を運んでもらっても、風景ががらっと変わって楽しめると思います。3月から5月上旬ごろにかけてはいろいろな球根の花がリレーしていき、見頃の花の入れ替わりが早いです。5月になると宿根草に徐々に移行していき、ミツバチやチョウなども遊びに来ると思います。宿根草の花が特に多く咲くのは6〜7月頃で、その後もリレーは秋まで続きます。2年目以降は植物のボリュームや花の数も、どんどん増していきますよ。

秋から冬にかけては、『シードヘッド』と呼ばれる“種を付けた花がら”をあえて残す予定です。小さなポンポン状のものや、種の付いた穂など開花時とは異なる独特な姿も愛でてもらえるよう、シードヘッドを楽しめる植物を選定しています。ふわりと風に揺れる草の穂や紅葉する植物と共に、風情を感じていただけたらと思います。

また、夕日の逆光のなかで見る植物たちがひときわきれいだということもお伝えしておきたいです。はままつフラワーパークは午前中に来場する人が多いのですが、実は、閉園時間に近い時間帯や夜間開催期間の日没前に鑑賞するのもおすすめなんです」

小倉さんとはままつフラワーパーク

浜松市出身の小倉さん。はままつフラワーパークへの思いを伺いました。

小倉さん「はままつフラワーパークは子供の頃からずっと親しんできた場所です。家族で遊びに行ったり幼稚園で行ったりしていろいろな思い出があり、原風景ともいえます。仕事の関わりとしては、これまでも宿根草のガーデンやモザイカルチャーのデザインをさせていただいていました。今回の花博で、新しいガーデンを担当することができてとても光栄です!」



日によって見頃の植物が次々に変化し、成長を楽しむことができる新ガーデン、はなのはら。花博の期間中だけではなく、その後も何度も訪れて植物のいろいろな姿を愛でたいです🌸 小倉さん、ありがとうございました!

文:広報はままつ編集メンバー