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浜松市天竜区佐久間町でオンライン診療がスタート!地域医療の課題解決に向けデジタルを活用しています

医療機関へのアクセスが難しい地域に、どのように医療を届けるか? これは豊かなまちづくりを進めていくために解決していかなければならない課題です。静岡県内には、山間地や離島といった医療機関へのアクセスが難しい地域で医療を確保するための「へき地医療拠点」が6カ所存在しています。

浜松市では佐久間病院がその役目を果たしており、医師が定期的に訪問・巡回診療をすることで、地域住民の健康を見守ってきました。

その巡回診療をより持続的に行えるようにとの想いから、佐久間病院がオンライン診療の取り組みをスタート。2023年2月2日(木)に佐久間町福沢地区で第一回のオンライン診療を行いました。この記事では、当日の様子をレポートします。

佐久間病院について

引用:浜松市 国民健康保険 佐久間病院ホームページ

佐久間病院は、浜松市が運営する北遠医療圏唯一の公立医療機関です。愛知県および長野県の県境に接する浜松市天竜区佐久間町に所在し、主に佐久間町・水窪町の住民に医療を提供しています。林野率96%の医療圏にあって、地域住民が医療を確保できるよう運営されてきました。一般外来はもちろん、医療へのアクセスが困難な「無医地区」などにも訪問診療や往診、巡回診療を行っています。

通院が難しい人にも医療を届ける「オンライン診療」が佐久間病院で始まった背景

今回、佐久間病院でスタートした「オンライン診療」とは、どのような医療の形でしょうか?

オンライン診療は、離れた場所にいる医師と患者をICT(情報通信技術)でつなぎ、スマホやタブレットを通じてリアルタイムに患者の診察・診断を行う方法をいいます。

通える範囲に病院がない人や、仕事が忙しくて平日に通院する時間の取れない人、感染リスクを抑えたい人など、通院が難しい人に適切な医療を提供できる手段として、全国で徐々に普及してきました。

(福沢地区)

天竜区佐久間町では「福沢(ふくざわ)」「相月(あいづき)」「吉沢(よしざわ)」の3地域で、それぞれ月1回の巡回診療を行ってきました。医師、看護師、事務員の計3名が車で1地域を回ると、半日を要します。

佐久間病院からの道のり。道中は曲がりくねった山道が続きます。

限られた人数の医療従事者で運営している佐久間病院では、巡回診療利用者の増加や地域医療に係る医師の減少により、巡回診療をこのまま継続していくことには課題がありました。今後も巡回診療を続けていくために、より持続可能な方法が求められていました。

今回、その一部をオンライン化し、医師と患者それぞれの負担を軽減しながら持続可能なへき地診療の形を目指します。

オンライン診療の実施方法

集会所など地域のよりどころを実施場所とし、インターネット回線を整備しタブレットを配置しました。この場所は電波の弱い環境でしたが、今回デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォームのパートナー会員であり、地域創生に関する包括連携協定を締結しているソフトバンク株式会社より全面協力を得られたことで、オンライン診療のできる環境が整いました。

医師はオンラインで参加しますが、実施場所には地域支援看護師(※)1名が派遣され、患者に付き添います。看護師が「脈拍(心拍)」「呼吸」「血圧」「体温」「血中酸素飽和度」の基本的なバイタルをチェックしたあと、タブレットを通じて医師が問診を行います。

  • 実施場所:集会所など地域のよりどころ

  • 対象者:慢性疾患で病状が安定しており、健康管理のため定期的に受診している人

  • 環境:タブレットを配備し、Web会議アプリを通じて佐久間病院にいる医師とテレビ通話を行う

  • 方法:現地で地域支援看護師が付き添い、医師はオンラインで問診を行う。問診結果による処方薬をオンライン診療当日に渡せるよう事前に準備をしておく

※地域支援看護師:地域の実情に精通した医師会や病院所属の看護師

2023年2月2日、福沢集会所で実施されたオンライン診療では、2名の住民(それぞれ70代と80代)が受診。問診では、医師から「その後、血圧はいかがですか?」と質問が。患者さんは「数カ月前に落ち着いてから、数値は変わりません」と答えます。

そのほか自身の健康状態について、「この前、痛みがあった膝の調子も、あれから良くなりました」と医師に伝えられました。体調・容体に大きな異変がない場合は、最後に薬が処方され受診が完了します。

オンライン診療では、薬の処方についても工夫しています。患者の皆さんが処方を受ける薬は、血圧の薬やアレルギーの薬などの長期処方薬です。そこで、あらかじめ電話で患者さんの体調を確認して薬を用意しておき、オンライン診療の当日に渡せるよう準備をしています。

もし電話口での確認や診察時に体調の変化などが見られた場合は、佐久間病院にいる医師がオンライン診療当日に新たな薬を処方します。佐久間病院で処方された薬は、後日になりますが郵送で患者さんの手元に届きます。

通院時と変わらない感覚に期待、医療を身近に感じてもらうきっかけにも

佐久間病院の木原医師

実際にオンライン診療をやってみて、どのようなメリットやデメリットが感じられたでしょうか? 患者さん、佐久間病院の木原医師、そして佐久間病院担当職員のそれぞれに感想を聞きました。

患者さん:音声も画面も鮮明だったので、とくに不便は感じませんでした。先生の顔が見られたので安心して、タブレットでも十分に自分の体調を伝えられました。

木原医師:対面で行うときとほぼ変わらない診察ができたと思います。一方で、患者さんとのコミュニケーションの機会という意味では、会いたい気持ちは残ります。注射や治療も含めて全ての診断をオンラインでは行えませんので、補助的な手段としてオンライン診療は有効だと思いました。

佐久間病院担当職員:通信も問題なく、無事に実施できて安心しました。とはいえ法律上の制限があり、巡回診療の全てをオンライン診療で運用することはできません。これからは2カ月に1回かそれ以下の頻度で、オンライン実施を行う予定です。また、オンライン診療が定着していけば、さまざまな応用も考えられると思いました。

ーーオンライン診療に対する期待感は?

患者さん:豊かな暮らしは健康な身体あってこそ。私も今は車の運転ができるため不自由なく暮らしていますが、運転免許証を返納した後を考えると、自宅から歩いていける身近な場所でオンライン診療を受けることができれば安心です。


巡回診療は、佐久間病院や浜松市の職員が地域住民の皆さんと対話する貴重な機会にもなっています。

木原医師:医療過疎地に医師を派遣することを目的とする大学で学び、佐久間病院に着任しました。病院までの道のりは山道で坂も多く、雪が積もった日には通院が難しいなど、地域の交通の便は心配していました。運転免許証を返納する住民の方も増えています。それでも患者さんの様子は定期的にうかがえるようにしたいと思っていたところ、オンライン診療の取り組みが始まったので希望を感じているところです。

佐久間病院担当職員:じつはこの取り組みを検討し始めた2021年度、佐久間病院は医師3名体制で運営していました。しかし、この体制では巡回診療を行うにもスケジュールが厳しいのが現実です。この先も長く巡回診療を続けていけるように、デジタル・スマートシティ推進課に相談して今回のプロジェクトに取り組みました。

これまでも巡回診療には、市の事務職員が同行してきました。住民の皆さんと対話する機会になりますから、オンライン実施になってもその方針は変えません。集会所が医療機関にアクセスできる場所のひとつを担うことは、地域の皆さんに医療を身近に感じてもらうきっかけにもなると期待しています。

ーー今後の展望について教えてください。

佐久間病院担当職員:今回、オンライン診療を実施するにあたって気をつけたのは、地域の皆さんが「だんだんと順応できる仕組み」にすることでした。タブレットを活用したのは、スマホを普段から使っている人が多いので負担が少ないと考えたためです。テレビ通話には、もともと佐久間病院で使用していたWeb会議アプリをそのまま採用しました。

地域の皆さんにとって、オンライン診療が徐々に身近なものになっていくといいなと思います。少子高齢化や人口減少の世の中にあっても、デジタルの力を活用して便利で幸せに暮らせる社会づくりに貢献していけたらうれしいです。






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