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シャトル織機でつくる綿の生地

江戸時代から織物工業が盛んだった遠州地域は、綿織物の三大産地の一つとしても知られています。

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広報はままつ2021年12月号の表紙


表紙に写っているのは「シャトル織機しょっき」という、糸から生地をつくるための機械です。浜松市西区雄踏町山崎にある古橋織布さんで、およそ50年前から使われているものを撮影させていただきました。

30〜40年ほど前までは浜松にたくさんの織物工場があり、ガシャンガシャンと織機の音が聞こえていたといいます。古橋織布さんは、今では数少なくなった昔ながらの製法を守っている会社の一つです。

工場内は、耳栓なしではいられないほど大きな織機の音が鳴っていて、しばらく耳が聞こえづらくなったほどでした。織子おりこさんと呼ばれる方が常に工場内を回り、糸の絡まりやほつれなどがないか点検していらっしゃいました。

古橋織布さんのyoutubeチャンネルで工場内の雰囲気が分かります

シャトル織機では、上下に開いた何千本ものたて糸の間を、よこ糸を載せたシャトルが何度も往復して織っていきます。

最新の織機は、織るスピードを重視するものが多いため、糸をピンと張って織ります。一方で、シャトル織機は、糸にできるだけ負担をかけずにゆっくりと織るため、空気を含んでふっくらと柔らかい生地に仕上がります。糸の断面は丸いままなのだとか。

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柔らかな風合いが特徴の生地とシャトル


織り上がった反物は目視で丁寧に検査します。

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目視で検査(検反)

独自の風合いを生み出すシャトル織機は、今はもう製造されていません。古橋織布さんでは、自社でメンテナンスができるように織機のメーカーから技術指導を受けて、織機も大切に受け継いでいるそうです。

社長の西井佳織理さんは「ファストファッションも良いけれど、職人が携わる遠州織物にも目を向けてみてほしい。若い世代に技術を伝え、遠州織物を後世に残していきたい」と話してくださいました。

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実際に工場を拝見し、お話も伺ったことで、シャトル織機で生地をつくるには手間も時間もかかることが分かりました。それでも、シャトル織機でしか生み出せないような、柔らかな風合いの生地をつくりたいという、職人さんのこだわりが強く心に残りました。