道路損傷などの通報システム「いっちゃお!」で、市民協働による安全・安心なまちづくりを行っています
道路の白線が消えてしまっていて車での走行に不安を感じる、カーブミラーが曲がっていて事故につながらないか心配……など、道路施設の不具合に気付いたことはありませんか?
浜松市では、2015年から道路損傷などをスマホで通報できるシステム「いっちゃお!」を運用し、道路施設・河川施設の危険箇所や要修繕箇所について、市民の皆さんからの通報を受け付けています。
そのシステムが2022年10月1日から、浜松市公式LINE「しゃんべえ情報局」から通報できるようになりました。
LINEで運用を開始してからは通報件数も大幅に増えていて、市民との協働による、安全・安心なまちづくりが進んでいます。
そこで今回は、浜松市土木部 道路保全課に、LINE上での運用から1年以上が経った「いっちゃお!」の取り組みについて聞きました。
道路損傷などの通報がより手軽に!
――はじめに、「いっちゃお!」の概要を教えてください。
小杉:「いっちゃお!」は、浜松市公式LINE「しゃんべえ情報局」のメニュー画面から、道路施設および河川施設の不具合を通報できるシステムです。
道路の舗装・白線の他、側溝、道路への落下物、カーブミラー、ガードレール、街路樹など、さまざまな道路施設の不具合を報告できます。浜松市は受信した写真や位置情報から正確な情報を把握し、必要に応じて修繕などを実施しています。
――気付いたときにスマホから通報できるのは便利ですね。「いっちゃお!」というサービス名も印象的です。
大野:このサービス名には、市民にとっては「(不具合を)言っちゃおう」、職員にとっては「(現場の修繕に)行っちゃおう」という意味が込められています。「いっちゃお!」のシステムができた2015年当時に、親しみを持って使ってもらえるようにと付けられたそうです。
――さっそく使ってみたくなりますね!「いっちゃお!」の使い方を教えてください。
五十嵐:LINEで「しゃんべえ情報局(アカウント名「浜松市」)」を開いたら、メニューの「各種通報サービス」をタップし「道路損傷いっちゃお!」に進みます。
通報したい項目を選び、損傷などの状況をカテゴリで指定。カメラ撮影かアルバムフォルダからの選定により写真を添付してもらいます。
続いて、地図を開いて該当の地点を指定し、さらに航空写真上で正確な位置を指定してもらい、「送信」すれば完了です。
――意外とかんたんに通報できました。通報を届けた後は、どのように対応してもらえますか?
大野:内容を確認のうえ、応急対応か経過観察かの判断をしています。内容によっては、対応まで時間をいただく場合もありますが、基本的に通報者本人に対応状況を返信しています(※)。
五十嵐:ときには、「街路樹がいまにも倒木しそう」、「道路が破損し、車や人の往来に支障が生じている」といった、緊急性の高い事案もあると思います。人身に危険が及びそうだ、事故につながりそうだと感じた場合は、電話で通報いただくようお願いしており、画面にもそのように明記しています※)。
道路管理延長はおよそ8,500キロメートル、職員によるパトロールには限界も
――道路損傷の発見に市民の協力が欠かせない理由は何でしょうか?
大野:浜松市が管理している道路には、一般国道の一部や県道、主要な地方道、そして生活道路などが含まれます。道路管理延長がおよそ8,500キロメートルと、政令指定都市の中で最も長いということをご存じでしょうか?
浜松市の職員が毎日のパトロールで点検しているものの、全てをチェックしきれないという点が課題でした。
この広い市域で大小ある道路施設の不具合を発見するには、市民から“気付いたときに教えてもらうこと”が、実は理にかなっています。「いっちゃお!」のシステムができる前から、電話やFAXによる通報がとても役に立っていました。
――システムをLINEに移行したのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
小杉:2015年から運用してきた旧システムの更新の時期を迎えた中、しゃんべえ情報局の運用を担当していた職員から「『いっちゃお!』をLINEで運用してみてはどうか」と提案をもらったのです。
LINEは、幅広い世代で広く使われているアプリですし、浜松市の公式アカウントであれば「いっちゃお!」の利用増が期待できます。絶好のタイミングだということで、2022年4月ごろからLINE移行を進めました。
――LINEで運用してみて、実際の効果はいかがですか?
小杉:通報件数が大幅に増加したのは、うれしい効果ですね。私自身、日常の移動の中で「あ、ここ危ないな」と気付いたら「いっちゃお!」で通報していますし、スマホから通報しやすくなったと感じます。
大野:LINE移行に伴い、損傷などの状況を、ボタンをタップして入力できるようにしたことも工夫の1つです。もちろん、明記されていない項目であっても「その他」から自由記入で通報してもらえるのですが、あらかじめ項目が示されていることで通報しやすくなると思ったので。
――通報が増えた一方で、運用面が大変になってしまったのでは?
小杉:LINEに移行する前は、経過観察程度の通報が増えてしまわないか、と心配する声もありました。ですが、実際には協力的な情報ばかりで、当初の心配は杞憂に終わっています。
これは、「いっちゃお!」の運用に関わってきた私の個人的な所感ですが、「道路状況が改善されたらうれしい」という気持ちで通報してくれる人が多いのだと思います。通報者はわざわざ足を止め、通報に時間を割いてくれているわけですから。
自治会加入率が高く、まちづくりに協力的な市民が多いことも影響しているのかもしれません。いずれにしても、ありがたいことです。
大野:工事・修理の発注を行う各土木整備事務所にも通報の確認作業を振り分けており、通報件数は一日に換算すると数件程度。さらに、管理システムから修繕工事の発注書を出力することもできるので、職員側の事務負担はいたって軽微です。
――「いっちゃお!」の運用がうまくいっているポイントは何でしょうか?
小杉:複数の部署にまたがるシステムなので、各土木整備事務所とのコミュニケーションを心がけています。
毎日「いっちゃお!」の管理画面にログインすることにはじまり、通報者への対応報告を送るところまで。本庁側で通報案件ごとのステイタスをつねに確認しており、更新漏れがあったら担当の土木整備事務所まで連絡しています。
また、拠点によってシステムの使い方が異なる場合もあるので、土木整備事務所の現状を確認しながら運用ルールを統一しています。
大野:そして、全てのやり取りは難しくとも、「いっちゃお!」はユーザーと双方向のやり取りができるかたちを目指してきました。通報内容が不明瞭な場合や、場所がはっきりしない場合などに、通報者とLINE通話でやりとりができるようになっています。
「いっちゃお!」が起点となり他サービスへ横展開、市民協働によるまちづくりが実現へ
――LINEでの運用に移行して1年以上が経ちました。これまでの感想を聞かせてください。
小杉:市民が使いやすく、まちづくりに役立つ情報を寄せてもらえるシステムとして、「いっちゃお!」はよくできていると感じます。大きな不具合もなく運用できているのは、2015年から「いっちゃお!」のシステムを構築・運用してきた経験が大きいです。
というのも、もし通報システムがベースになければ、一からLINE上のアプリケーションを構築しなければいけなかったからです。他の地方自治体の話を聞いてみても、一番苦心するのは、通報を受けてから後の業務をどう自動化するかだという声が多いようです。
旧システム上に発注から対応完了までの業務フローが構築されていたおかげで、LINE移行がスムーズに済みました。結果として、一からシステムを構築するよりも、コストや開発期間も少なく済みました。
大野: LINE上に同じようなシステムをつくる際も比較的容易に実現できます。「いっちゃお!」を皮切りに、公園施設の損傷や不法投棄、路上死亡動物、盛り土など、他サービスにも通報システムが横展開されました。
市民の安全・安心につながる通報サービスがLINE上に拡充していることを見ても、市民協働を念頭に置き、「いっちゃお!」の構築や運用に携わってきてよかったと思います。
――それでは、最後にメッセージをお願いします。
小杉:浜松市では、市民が安全・安心に暮らせる地域をつくるため、既存の道路施設を有効に賢く使うことが必要だと考えています。限られた財源の中で、計画的な維持・修繕などを確実に行わなければいけません。
そうした状況の中、市民協働による道路施設の維持管理を推進することは、市職員だけでは発見が難しい不具合の修繕につながります。結果として、市民起点で「自分たちにとって必要なまちづくり」が進むことにつながり、Well-Beingの向上にも寄与するでしょう。
今後も、市民協働による道路・河川管理、まちづくりを進めていきたいと思います。
浜松市公式LINE「しゃんべえ情報局」を友達登録して「いっちゃお!」を使ってみよう!
「いっちゃお!」を利用するためには、浜松市公式LINE「しゃんべえ情報局」への登録が必要です。
「しゃんべえ情報局」には、2024年3月15日現在で、427,492ユーザーが登録中。浜松市の耳より情報や災害情報を発信しているほか、連絡ごみの回収や道路損傷をはじめとした各種の通報なども受け付けています。
「より多くの市民の皆さんにご利用いただくために、これから登録していただく人にとっても、以前から登録していただいている人にとっても便利なシステムにしていきたい」と、意気込みを語るのは、浜松市公式LINEを担当する広聴広報課の職員。
これを機に「しゃんべぇ情報局」へご登録を。そして、道路施設をはじめとする不具合を発見したときは、ぜひ各種通報サービスを活用してみてください。
「しゃんべえ情報局」の登録は以下よりhttps://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/koho2/pr/line/
※「LINE」はLINEヤフー株式会社の商標または登録商標です。
文/デジタル・スマートシティ推進課