「〜オープンデータの活用で大学生活をハックしよう!〜 静大アイデアソン・データソン」を今年も開催しました
国や地方公共団体などが保有するデータのうち、インターネットなどを通じて誰でも無償で二次利用できるよう公開されている「オープンデータ」。新しいビジネスの創出を促し、市民の利便性向上や地域経済の活性化が図れると、国を挙げて利活用が進められています。
浜松市でもオープンデータの利活用を推進しており、市内の若年層向けにもオープンデータに触れてもらう機会をつくり始めています。
2023年5月20日(土)・7月1日(土)の2日間にわたり、静岡大学浜松キャンパス(静岡県浜松市中区城北3丁目)で、オープンデータを活用し地域課題の解決策を考えるイベントが開催されました。議論を深める「アイデアソン」「データソン」という手法を用いて、参加学生らが自分たちの身近な困りごとを解決する新たなサービスを考案します!
本記事では、この「静大アイデアソン・データソン(以下、本イベント)」の様子をお届けします。
学生が地域課題の解決に挑む!静大アイデアソン・データソンとは?
アイデアソン・データソンとは、「アイデア」や「データ」といった単語に「マラソン」を掛け合わせた造語で、米国・シリコンバレーが発祥の、アイデアを生み出すための方法の1つです。
決められた時間内でチームを編成しアイデアを議論し、サービスやビジネスのプランをまとめます。まるでマラソンをするかのようにアイデアの改良を重ね、まとめあげたプランを競うことから、その名が付きました。
静岡大学のアイデアソン・データソンは2017年から開催されており、2023年で7回目を数えます。2023年度は、「学校生活のなかで感じる身近な課題を解決するサービス」をテーマに、具体的な解決策となるサービスの創出にチャレンジしました。
さらに、参加者の議論を活性化する仕掛けがあるのも、本イベントの醍醐味。多角的な視点を得られるように、静岡文化芸術大学の学生や県内の高校生にも参加を募っているそうです。
どのような背景から、このようにユニークなイベントを開催しているのでしょうか? 運営を務める、情報学部情報社会学科の藤岡伸明准教授にお聞きしました。
「情報社会において信頼できる有用なデータを見抜いて社会貢献に生かせる人材を育成したい、という情報学部のポリシーに合致していることが、本イベントを開催してきた理由の1つです。グループワークを通じて得られる体験は、日頃の座学だけでは得られない実践的なものだと感じています。
また、アウトプットをやり切る体験が持てるのも、本イベントの利点ですね。本イベントでは、発案したアイデアをアイデアのままにせず、データを活用しながら世の中の課題を解決に導くサービスプランにまとめあげ、発表します。こうしたプロセスが、学生の“やり切る力”を育むと考えています。
学生たちが日常を過ごすキャンパスは、“小さなまち”そのものです。大学生活の困りごとを解決するアイデアは、地域でも必要とされるサービスとなる可能性を秘めているはず。学生ならではの斬新な発想力に期待しています」
本イベントからどのようなサービスアイデアが生まれるか、楽しみですね!
企業も顔負け!?新規事業の開発手法をインストール
5月20日に開催された1日目は、まず、市川さんのレクチャーを聞いてオープンデータについて学習しました。その後、学生生活で感じる身近な課題と、それを解決するアイデアを参加者がそれぞれ発表し、チーム編成を行いました。そこから、課題を裏付けるために必要なデータを考え、入手し、サービスの対象者となるユーザーに調査も実施。本格的にアイデアを検証しました。
7月1日に実施された2日目では、1日目に考案したアイデアを具体的なサービスのかたちに磨き上げます。どのように組み立てれば、ユーザーの課題を解決し、ユーザー満足度を得られるのか……アイデアを検証していきます。サービスのプランニングまで行い、最後にチーム発表と表彰を行いました。
全7チームが発表へ!斬新なアイデアが得られたサービスプラン
学生・生徒たちの身近な困りごとからヒントを得て、社会課題の解決につながるサービスが全部で7つ考案されました。以下に発表内容をお伝えします。
■静岡大学スマートユニバーシティ化
校内の電光掲示板や学生自身のスマホなどから、空きスペースの情報を取得できるシステムを考案しました。「1人でもくもくと勉強したい」「グループワークを行いたい」と思いたったとき、適切なスペースを探すのに手間取ってしまう課題を解決するサービスです。
空きスペースの現状が見える化されるので、学生は利用目的に合った部屋を見つけて使用できるようになります。また、このシステムが効率的な施設利用を促すだけでなく、校内全体の節電や清掃作業の効率化にも貢献できると考えました。
■三方よしの履修情報サイト
授業に関する内容が閲覧でき、履修した授業のミスマッチを軽減するサイトを発表しました。シラバスなどから得る事前情報と、実際の授業の内容にギャップがあり、授業を数回受けたあと履修を取り消してしまう学生もいるとのこと。
また、企業もサイトに登録でき、企業側の情報と学生の履修情報に基づく就職活動の支援につながります。履修する授業のミスマッチが減ることで、授業のレベルアップにも。学生も教員も企業も三方よしのサイトです。
■図書館の利用状況見える化
図書館の空席状況を一覧で見える化するサービスです。わざわざ図書館まで行かなくても、空席をWebページなどで確認できるようにしたいと考えました。
プッシュ通知の機能を連携することで、「図書館が空いているから勉強のチャンスです!」といったように閑散期の利用も促せます。空席を探す学生の労力が削減できるだけでなく、座席の利用データが蓄積されると将来的な図書館の有効利用が期待できます。
■諦めないで、その落とし物。落とし物オンライン交番
遺失物の登録や検索をオンライン上でできるアプリを考案しました。「一体どこに落とし物をしてしまったのだろう――」。落とし物をしてしまったとき、誰もが感じたことのある課題を解決します。
ユーザーはマイナンバーを登録することでアプリが使用でき、AIによる質疑応答で落とし主と遺失物の照合を行います。アプリのユーザーには「善意ポイント」を付与することで、遺失物の登録件数を増やし、まちの安心・安全にも寄与したい考えです。
■浜松市NO坂計画!
「キャンパスまでの道のりに坂が多く、自転車での通学が大変だ」という身近なお悩みから、人力でこぐ通常の自転車に取り付けるだけで電力による走行アシストが得られる小型モーターのサービスを発案しました。
自転車の交通量が多く、とくに上り下りの大変な坂の付近にモーターを設置します。自転車の利用者を増やせるほか、モーターの開発企業にとっては新たな収益が見込まれます。
■どこいる?BUSTIME(バスタイム)
「どこいる?BUSTIME」は、最寄り駅の時刻表が見られ、バスの到着見込み時間も把握できるアプリです。「バスの遅れが読めないことで、予定に遅れてしまうことがある」「混雑する時間帯は、バスを1本見送ることがある」といった課題を解決します。
交通情報や天気などの情報も掛けあわせ、バス停ごとの混雑状況の予測・分析に役立てていきます。利用者に合わせたバス停づくりも可能に。バスの待ち時間が短くなり、市民のWell-Beingにつながります。
■「自転車どこだっけ?」に終止符を 自転車ミッケ!アプリ
駐輪場で自分の自転車をどこに止めたか分からなくなること、多数。自分の自転車を止めた場所が一目で分かるアプリを開発したいと考えました。自転車のIDと停車場所のIDをひも付けて管理します。
これにより、アプリから自分の自転車の所在地が分かるほか、駐輪場の混雑状況も見える化されます。放置自転車の管理が楽になり、無駄なスペース占有も減らせるはずです。結果として止められる自転車の総数を増やせることが期待できます。
最優秀賞は「自転車ミッケ!アプリ」
最優秀賞は、自分の自転車を止めた場所が一目で分かる「自転車ミッケ!アプリ」が受賞しました。
自転車を止めた場所が分からなくなり、探索に無駄な時間を使ってしまうこと――。多くの人が感じたことがあるであろう課題に着目した点と、本サービスが実用化された場合には地域全体に派生できる可能性が評価されました。
受賞したチームの皆さんに、感想をお聞きしました!
「私がこのチームに参加したのは、自分自身が日頃困っていることを解決してくれるアイデアだと思ったからです。さらに、このアプリにはたくさんの可能性があって、例えば学食や図書館の混雑状況などの見える化にも応用できそう!と感じて、チームに参加しました」
「アイデアをサービスや商品のかたちにするのは、思ったよりも難しいと感じましたが、そうした経験を得られてよかったです。2日間を終えた今は、今後も同じような機会があれば参加したいと思っています!」
そして、特別賞は「諦めないで、その落とし物。落とし物オンライン交番」が受賞!
アイデアを発案したメンバーは、校外での交流やディスカッションの機会を求めて他大学から参加した1年生でした。「チームの皆さんがとても親切にしてくれました。皆さんの協力のおかげで特別賞をいただけてうれしいです!」と、元気いっぱいなコメントを寄せてくれました。
静岡大学でコミュニティ政策を学んでいるというメンバーは、「授業でもデータの取り扱いについて学んでいますが、実際のデータを使いサービスアイデアを生み出したのは、実践的な学びになりました」との感想が。
就職を来年に控えたメンバーからは、「アイデアをサービスのかたちに具体化するときは、他者の存在が大事だと気付きました。実際に、友人からもらったアドバイスを組み込んだ部分が、審査員の方にも評価されていたからです。サービス設計には、ユーザー視点が欠かせないことを学べてよかったです」といった感想をお聞きしました。
本イベント発のアイデアを、実際のまちづくりに生かすために
盛況のうちに終了した本イベント。ここからさらにアイデアを磨き込み、実用的なプランに落とし込みたい参加者は、2023年9月9日・10日に開催される「静岡県オープンデータハッカソン」にチャレンジすることもできます。
藤岡准教授は、「自分のアイデアを実用化するのは、ハードルが高いし難しそう……と感じる参加者でも、卒論のテーマとして探求しつづけることを検討してみてほしい」と語ります。
「例えば、『落とし物返還アプリ』から派生して『落とし物がちゃんと戻ってくる社会とは?』といった研究テーマが立てられます。2023年度もユニークなアイデアがたくさん出て、どれもよい視点だと感じるからこそ、参加者の皆さんにはテーマを継続して磨き上げてもらえたらうれしいですね」
キャンパスは“小さなまち”。本イベントから生まれたアイデアが、実際のまちづくりにつながっていくと素敵ですね。
浜松市とともにデジタル・スマートシティの取組を推進する事業者を募集中
浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォームは、官民連携でデジタル・スマートシティ浜松の取組を推進していくプラットフォームです。本プラットフォームでは、デジタルを活用し、市民生活の質の向上や地域課題の解決に一緒に取り組んでくださる事業者の皆さんを募集しています(参加無料)。
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