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住民から住民へスマホの使い方を教えます! 水窪町でスマホ普及の新たな仕組み、デジタル人材の育成事業がスタート

浜松市公式note

65歳以上の高齢者が地域人口の半分を超えている天竜区水窪(みさくぼ)町。人口1,743名(2022年10月現在)のこの町にも、デジタル化の波は押し寄せています。

生活の利便性向上や不便さの解消には、スマートフォン(以下、スマホ)の活用が有効です。しかしながら都心部と環境の異なる中山間地域では、スマホの使い方やITリテラシーについて地域内で身近に相談できる体制づくりが求められます。

そこで2022年に浜松市は、地域の住民の中からデジタル相談員を養成する「デジタル技術活用支援事業」を水窪町でスタート。ITの専門家が住民の方にノウハウを伝え、集落単位でスマホの困りごとを解消できる仕組みが構築されつつあります。

2022年9月6日(火)に行われた第3回デジタル相談員養成講座の様子とともにお届けします。

なぜ中山間地域で、デジタル相談員の育成が急がれるのか?

なぜ水窪町では、地域の住民からデジタル相談員を育てる取り組みが始まったのでしょうか?

「その背景には、急速なデジタル化に地域全体が追いつく前に、スマホを持たないと暮らしが成り立たない時代が来てしまったという切実な地域課題があります」

と語るのは、本事業を請け負うNPO法人まちづくりネットワークWILL(ウィル、以下:WILL)の理事長 平澤文江さんです。

森林が町内の約96パーセントを占める水窪町では、最寄りのコンビニまで車で片道1時間というご家庭も。とくに免許を返納した人にとって、日常の手続きや買い物をするのも大変な状況といえます。

「行政のお知らせを受信する行政防災無線も2021年にデジタル化が始まったほか、マイナンバーカードもスマホとの連携が進んでいます。国は自治体のDX(※1)を進めており、今後、数々の行政サービスがデジタル化されていくとも聞きました」と平澤さん。

※1)DXとは?|デジタル・トランスフォーメーションの略。 IT先端技術やデータを活用して、組織や仕組みなどを抜本的に変革すること。

WILLの平澤理事長

水窪のみんなもスマホを使いこなせなければ、これまでと同じような暮らしのサービスを受けられなくなるかもしれない......

そんな危機感からWILLはこれまでも、高齢者のスマホデビュー支援やスマホ教室の開催など、水窪町のデジタル化を住民目線で進めてきました。


引用:DP SIM SUPPORT

また、最寄りの携帯ショップまでも車で片道1時間以上かかる水窪町で、地域に根差したスマホ支援を行っているのが、DP SIM SUPPORT(ディーピーシムサポート)の笹本純一代表です。

2021年に個人事業として開業する以前、静岡県内に約30店の携帯ショップを展開する株式会社エス・ティー・シーに在籍していました。2018年より同社のCSR活動の一環として月に2日ほど水窪町へ通い、地域におけるスマホのトータルサポートに従事。その後、より中山間地域に寄り添った支援をしたいとの想いから独立し、今に至ります。

DP SIM SUPPORTの笹本代表。2022年8月には、水窪町に小さな携帯ショップをオープン。

スマホに慣れない住民向けに、住民みずからスマホの買い方・使い方を教えるようにできないか? 浜松市は2022年度、地域のデジタル人材を養成する「デジタル技術活用支援事業」を立ち上げました。そして、2022年度は水窪町におけるデジタル技術相談人材の育成・活用をWILLに委託。WILLはデジタル相談員養成講座への登壇をDP SIM Supportにも依頼しながら、地域でデジタル相談員の養成を行っています。

スマホ講座なのに防災教育?暮らしに寄り添ったテーマだからこそ本当の学びになる

水窪町におけるデジタル技術活用支援事業の第1期では、2022年7月から2023年3月までに計9回のデジタル相談員養成講座が実施されます。水窪町の各集落からデジタル相談員の候補者を選出し、12名の候補者が集まりました。地域内の交流に積極的で、いわば水窪町のインフルエンサーともいえる存在のみなさんです。

9月6日の講座では、スマホから情報を取得する方法やキャッシュレス決済の概要、セキュリティ対策など幅広いテーマが取り扱われました。

テーマ1:災害時のスマホ活用法

正しい防災対策を行うためにも、万が一のときには自身の命を守るためにも、防災に関する情報を得る手段を複数持つことが重要です。

水窪町では、NPO法人のWILLとこいねみさくぼ、水窪観光協会の3団体で構成される地域活性化団体の「よかっつらみさくぼ」が、「水窪くらしの情報局」というLINE(※2)アカウントを運営しています。

水窪くらしの情報局では、住民への情報伝達手段にLINEを活用し、文字や画像、音声により分かりやすく情報を届けています。地域に特化した情報源があることで、暮らしの安心感が増しますね。

テーマ2:スマホ決済の防犯について

水窪町の商店でもスマホ決済の導入が進んでいますが、インターネットを介した買い物だからこそ心配なのがセキュリティです。スマホ決済において、何にどう気を付ければ個人情報を守れるでしょうか?

平澤さん・笹本さんは、「アカウント、ID、パスワードの整理と管理」「スマホ端末(デバイス)のセキュリティ対策」「心のセキュリティ対策」という3つの観点から、個人情報の守り方を説明しました。

テーマ3:キャッシュレス決済でポイントを貯めよう

クレジットカードや電子マネー、QRコード(※3)決済など、国内で取り扱われているキャッシュレス決済の種類は、いまや20以上にもなるそうです。

笹本さんから、「水道光熱費などの"毎月、必ず支払っている費用"をクレジットカード決済に置き換えるのがポイントです。それだけで、支払い金額に応じたポイントが貯まってお得です」とキャッシュレス決済のお得な活用術が紹介されました。

相談員の数は多く、1人ひとりの負担は少なく。地域全体にデジタル化の恩恵を届けるポイントとは?

本講座の特徴は、講師も受講者も学びを楽しんでいる点かもしれません。場づくりにおいて意識していることを平澤さんに聞きました。

みんなで楽しく学べる場にしようと心掛けています。学びのテーマを暮らしに寄り添った形にしているのも、あえてなんです。自分ごとに感じられるからこそ学びになりますし、家族や友人にも教えてあげたいと思えますからね」

受講者の卒業要件は、どのように考えているのでしょうか? 笹本さんにお聞きしました。

「デジタル相談員になっていただくにあたり、卒業要件はあえて定めていません。というのも、私たちの呼びかけに応じて参加してくれた候補者みなさんのモチベーションを何より大切にしたいからです。たとえば、デジタル相談員の方がご友人から『ネットで商品を買ったら困っちゃったよ』と聞いたとき、『どんなネットショップで買ったの?』と状況を聞き返せるだけでも、住民みなさんの不便や不安、犯罪の芽を摘むきっかけになります。デジタル相談員のみなさんが身近なスマホの困りごとに気付き、IT専門家へ繋いでくれる体制を作るのが今期のゴール。それができれば携帯ショップがない地域でも、みんなでデジタル時代の波に乗っていけると信じています」

受講者の方にも感想を聞きました。

60歳を超えて、都市部から水窪町に帰ってきました。最初は、『こんなに不便なところによく帰ってきたね』と周りからとにかく驚かれたものです。今では、スマホを活用してさまざまなサービスを受けられるようになり、暮らしが豊かになっていくのを実感しています。スマホを活用するようになったきっかけは、スマホでも公共料金の振り込みができると友人から聞いたことです。『スマホでそんな便利なことができるの?私もやりたい!』とワクワクしました。その友人にやり方を教わりスマホ決済を覚えたら、他にもやりたいことがたくさん出てきたんです。そこから笹本さんを紹介してもらい、いろいろと教わるようになり助かっています」

みなさんのお話を聞くほど、これからも水窪町でみんな仲よく暮らしていきたいという想いが伝わってきます。最後に平澤さんから今後のビジョンを聞きました。

「この活動を継続性のある事業にしていかなければと思います。そのため、『デジタル相談員の数は多く、けれども1人ひとりの負担は軽く』が目標です。一歩一歩、ゆっくりと。今から始めれば、スマホの勉強がじっくりできるでしょう。地域の誰もがデジタル化の波に乗り遅れることなく、これからも豊かな暮らしを送れるような町づくりに貢献できたらうれしいです」

そんなデジタル相談員養成講座の第4回以降は、いよいよ実践編に入ります。実際のスマホ相談会を開き、受講者のみなさんが一般の方からの相談を受け付けます。

地域に寄り添ったデジタル化の推進モデルが生まれつつある、デジタル技術活用支援事業。あらゆる地域の方が安心して暮らせるまちづくりを目指し、浜松市ではデジタル技術を活用したさまざまな取り組みを進めています。

今後の取り組みも浜松市公式noteでお届けしますので、アカウントをフォローして楽しみにお待ちください。

浜松市とともにデジタル・スマートシティの取組を推進する事業者を募集中

浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォームは、官民連携でデジタル・スマートシティ浜松の取組を推進していくプラットフォームです。本プラットフォームでは、デジタルを活用し、市民生活の質の向上や地域課題の解決に一緒に取り組んでくださる事業者の皆様を募集しています。

ぜひ以下のページよりご参加をご検討ください。



(脚注)
※2)「LINE」は、LINE株式会社の登録商標または商標です。
※3)「QRコード」および「QR Code」は株式会社デンソーウェーブの登録商標または商標です。

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