「マコモダケ」でおなじみ!『万葉集』にも詠まれている植物「マコモ(真菰)」とは?
こんにちは!「浜松市万葉の森公園」担当の亀田です。
「真菰」と聞くと、『鬼滅の刃』の登場人物を思いおこす人も多いかもしれません。主人公の炭治郎が修業をしているとき、狐のお面をつけて、突如として現れる真菰。そこで私も、突然ですが万葉植物の「マコモ【真菰/真薦】」を紹介したいと思います。
「マコモ」とは
「マコモ(Zizania latifolia)」は、イネ科マコモ属の多年草。大きなイネのような植物です。東アジアの温帯から亜熱帯にかけて分布しており、日本では、北海道、本州、四国、九州の各地の水辺に群生しています。
「マコモ」は、『日本書紀』や『古事記』でもその名を記された、私たち日本人と関わりの深い植物です。『万葉集』では「コモ【菰/薦】」と呼ばれています。『萬葉植物事典』によれば、「マコモ」にちなんだ歌は17首あります。
「マコモ」は茎葉を乾燥して、神仏の祭事や、みの・むしろ・枕などの生活用具の材料として用いられました。「マコモ」を束ねて作った枕は、万葉時代には「薦枕」と呼ばれていました。
現在「マコモ」は、地域おこしのために付加価値を付けて特産品として活用される事例もあるようです。
キノコ、トリュフの類縁の「マコモダケ」
日本では、古より、自然のもたらす四季折々の恵みを食してきました。『万葉集』に詠まれている「万葉植物」のなかにも、季節の食べ物として親しまれているものがあります。そのひとつが「マコモ」です。
「マコモ」の食用部分は「マコモダケ」あるいは「マコモタケ」と呼ばれています。
「マコモダケ」
この名前で「ピン!」ときた人がいると思いますが、「マコモダケ」は、「椎茸」「松茸」「えのき茸」と同じく、「菌類」に分類され、酵母の仲間です。菌類は、植物と違って、クロロフィルを持たず、太陽の光を捕捉することができず、他の生物の作ったものに頼って生きています。
キノコは、土壌中に菌糸のネットワークを作り栄養を集め、菌糸が十分なエネルギーを蓄えると、新たに成長して子実体ができ、土の表面から顔を出します。私たちが食べる、いわゆる「キノコ」は、この子実体です。
「マコモ」の場合は、若芽に黒穂菌が付着し生息を始めると、成長ホルモンが分泌され、茎が菌糸で肥大します。これが「マコモダケ」と呼ばれ、中国や日本で食用にされています。
中国では、「マコモ」は「交白(ジャオパイ)」「菰笋(クスン)」と呼ばれ、古くから高級野菜として食され、野生種から選抜育成された品種が食用として栽培されています。
「マコモ」は、油を用いた料理に適しており、油炒め、天ぷら、八宝菜などに利用できます。また、淡白でクセがなく、サクサクとした食感で、タケノコに似た風味があります。加熱すると甘味、風味が増すので、吸い物、和え物、煮物など、さまざまな調理が可能です。柔らかいものは、細く切ってサラダなどにして生でも食べられます。
「マコモ」は、食物繊維が多く、各種ビタミン・ミネラルを含み、低カロリー。栄養成分は一般的な野菜と同程度ですが、血圧上昇抑制効果、免疫力賦与、整腸効果などの作用があると言われています。また、二日酔いにも効果があるようです。
浜松市万葉の森公園「万葉亭」の「まこも膳」
「マコモ」を使った食事は、「浜松市万葉の森公園」内にある「万葉亭」でも、『まこも膳』として食べることができます。ただし、「マコモ」の旬である9月下旬から11月初旬までの季節限定メニューです。(秋までお待ちください)
これが、マコモづくし「まこも膳」!
『まこも膳』を提供してくださるのは、浜松市・浜北を拠点とし活動する万葉食研究会『月草の会』のみなさんです。
会長の野中正子さんが、「1994年の設立以来、万葉集などの書物、発掘遺跡、木簡などから万葉食の研究を続けています。できる限り当時の食文化を再現したうえで、おいしく食べられる万葉食を提供しています。」とお話ししてくださいました。
食事には、「庶民の食事」と「貴族の食事」があります。「貴族の食事」は、春は鯛の醤酢、夏は鰻の蒲焼き、秋には日干し年魚醤煮と、旬の食材を使った季節のメニューとなります。3月には「花の宴」という、春の膳を食べて花を愛でる小さなイベントもあります。新型コロナウイルス感染症の感染予防対策を万全にしたうえで行う予定です。
■浜松市万葉の森公園「万葉亭」
ご予約・お問合せ先/浜松市万葉の森公園
TEL:053-586-8700(9時から17時受付)
貴族の万葉食 1,200円、1,500円
庶民の食事 600円
※万葉食は予約制です。(原則として3人以上)
※メニューは季節で異なります。
定休日/月曜日