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データ連携基盤を活用したサービスアイデアの創出「データ・フュージョン・キャンプ 2023 ハッカソン」を開催しました

2023年2月に浜松市では、行政や企業・団体などが収集・保有するデータを連携し、それぞれが利活用できる形に変換するハブとなるシステム「浜松市データ連携基盤」を本格稼働させました。このことにより、さまざまなデータを官民で共有しながら、地域の課題解決や活性化につながるサービスの創出が進んでいます。

データ連携基盤とは、各システム間のデータを連携するハブシステムのことをいいます。アップロードした形式の異なるデータを、ユーザー各々のシステムで利用できる形式に変換できる機能を持ちます。これにより、行政のオープンデータや企業・団体の保有データなどの連携が進み、さまざまなデータをまちづくりに活用できると期待されています。

浜松市データ連携基盤のイメージ。API(エーピーアイ)という機能を介してさまざまなデータを連携

参考:2022年度、データ連携基盤を活用したサービスの実装に向けた、官民連携4つの取り組みが実施されました。

2023年9月21日(木)、浜松市データ連携基盤を活用しながら本市に必要なサービスを考え試作する「データ・フュージョン・キャンプ 2023 ハッカソン(以下:本イベント)」を開催しました。

本イベントには、市内外から行政や関連団体、民間企業などさまざまな立場の約30名が集まり、それぞれの所属の垣根を超え、地域課題の解決や地域の魅力向上につながるサービスの試作開発にチームで取り組みました。

この記事では、本イベントの開催背景や、データ連携基盤の活用で広がるデジタル・スマートシティの可能性についての話などを交え、当日の様子をお伝えします。


本市に必要なサービスを創出するために――浜松市でデータ連携基盤を活用したハッカソンを初めて開催した背景

まず、「ハッカソン」とは、「ハック(システムを解析する)」という単語に「マラソン」を掛け合わせた造語です。プログラマーをはじめとするIT関係者が、短期間で集中的にソフトウェアやデバイス、サービスなどの開発を行うイベントをいいます。

ハッカソンをすることにした背景には、次の二つの狙いがあります。

・プロトタイプと呼ばれる簡易的な試作版を通じて、サービスアイデアの価値を本イベントの場で検証し、開発の継続を検討できる

・さまざまなテクノロジーやアイデアを有する参加者同士が意見を出し合うことにより、革新的なサービスのプロトタイプ創出が期待できる

さらに、本イベントを通じて創出されたプロトタイプについて浜松市が継続フォローアップを行い、本市の課題解決や魅力向上につながるサービスへとつなげていくことを目指します。

データ連携基盤を用いたハッカソンは全国でも珍しく、本イベントは市内外から注目を集める結果に。首都圏をはじめとする浜松市外の参加者が約半数となり、多種多様なバックグラウンドの方がノウハウを持ち寄りました。


丸1日の開発タイムを経て5つのサービスアイデアが完成!発表および表彰へ

ほぼ1日の開発タイムを経て、全5チーム/5つのサービスアイデアが生まれました。それぞれの発表内容を以下にお伝えします。

● 真心DroneZ(まごころ・ドローンズ)
● Make Our City Data(メイク・アワ・シティ・データ)
● KOISR Hamamatsu(恋する浜松)
● 浜松HERO(浜松ヒーロー)
● NUT MAP(ナット・マップ)


真心DroneZ(まごころ・ドローンズ)

中山間地域である天竜区龍山地区を対象に、非常時に“真心”を届けるサービスを考案しました。平常時から信用を作ることが重要と考え、ドローンによる物資の運搬サービスを運営します。

携帯キャリアの発表データから、無線通信サービスの行き届いていないエリアを抽出。そのエリアに暮らしている世帯を割り出しました。国土地理院の標高データなどを組み合わせ、ドローンの航路を作成し、遠隔地から真心や物資を届けます。

時間不足のためプロトタイプを作成できませんでしたが、将来的には、オンラインの地図上で、真心や物資を必要としている人とそれらを提供したい人をマッチングできる仕組みにしたいとのこと。離れた場所にいながら、「○○さんが薬を欲しがっている、アプリからドローンで配達してあげよう」といったコミュニケーションが可能になります。

Make Our City Data(メイク・アワ・シティ・データ)

まちに存在するさまざまな混雑状況を解決したい。しかしながら、人出や交通量に関するデータは入手できても、それらの数値から特定のスポットの混雑状態を推論するのはとても難しいことです。そこで、飲食店などの施設単位で、混み具合を把握するデバイスを考えました。

サイコロ型のデバイスを机に置き、空席時は上面を空席にしておきます。席に客が案内されると、客自身や店員がサイコロの目を着席に変更。IoTセンサーでサイコロとデータ連携基盤をつなぎ、サイコロを転がすだけで店の混雑データを取得できるようにします。

デバイスのイメージ

このデバイスの特長は、市民の方が誰でも簡単にオープンデータをアップデートできること。たとえば市の公共施設から設置を開始することで、公共施設の有効活用を促し混雑状況の緩和につなげたいと考えました。

KOISR Hamamatsu(恋する浜松)

音声型のスマート観光案内サービスを開発しました。スマートスピーカーを通じて観光客の感想を聞くとともに、観光エリアで集計された「笑顔数集計データ」をデータ連携基盤から取得しおすすめの観光スポットを紹介してくれます。言語と表情という2つデータを用いることで、観光者の満足度を高精度で判断できるようになります。

会話型AI「Alexa(アレクサ)®」と生成AIの「ChatGPT(チャット・ジー・ピー・ティー)」などを組み合わせ、プロトタイプを作成しました。

写真中央右のタブレットが実際のプロトタイプ

ユーザに向かって、音声ガイドが「先ほどの観光スポットはいかがでしたか?感想を聞かせてください」と話しかけます。ユーザーの感想と笑顔を収集すると、続けて音声ガイドは「中田島砂丘をおすすめします。昨日、訪問者の笑顔が600回カウントされました」と、ユーザー属性に合った観光スポットを紹介してくれました。

また、KOISR Hamamatsuチームでは自動運転が実装された将来を見据え、車載スピーカーとしてスマート観光案内サービスの開発を進めたい考えを発表しました。

浜松HERO(浜松ヒーロー)

地域が主体となって行う防災訓練。災害発生時の備えとなったり、住民の防災意識を高めたりする重要な取り組みですが、浜松HEROチームは、「時として実施すること自体が目的になってしまい、防災訓練の効果が住民に十分行き届いていないこと」を課題だと捉えました。

そこで、考案したのが、クイズ形式で個人の防災意識を可視化し行動変容も促せるアプリです。

防災訓練の実施直後に、参加者にQRコードを配布し防災クイズに答えてもらいます。ゲーム感覚で防災意識を楽しく向上でき、全部のクイズに答えるとポイントがもらえる仕組みです。

データ連携基盤を通じて回答データを溜めていくと、地域ごとの防災力のレベルが可視化できるでしょう。さらに、収集したデータは、さまざまな防災シミュレーションに使える可能性があります。

市民一人一人の防災意識・防災力を可視化し、地域単位での防災意識強化につなげていきたいと考えました。

NUT MAP(ナット・マップ)

南海トラフ地震での津波被害が想定される浜松市。津波の発生時には「津波避難タワー」と呼ばれる一時避難施設に避難する人が集中することが予想されるため、地域特性や住民属性に合わせた避難指示が求められます。そこで、低コストで実現できる津波避難経路シミュレーションシステムを作成しました。

加工したデータを外部サービスへ取り込み、動きを確認している場面

指定したエリア内における避難開始から終了までの人流(人の流れ)をマップ上で確認できます。各住居から最短距離にある津波避難タワーを避難先に設定し、世帯別ごとの避難経路を自動で作成します。避難者の属性は、高齢者や子どものいる世帯とそれ以外(15歳~64歳)の2つに分け、歩く速度に差をつけました。

シミュレーションを行ってみると、最も多い津波避難タワーで1,000人以上が集まっていました。そのことから、全員が安全に登れるか、バリアフリー対策は十分かといった懸念事項が抽出でき、対策の立案に生かせることが分かりました。

また今回の開発ポイントは、発案者がプログラムを一切書かずにプロトタイプを作ることができたこと。ChatGPTでデータを加工し、テストを繰り返してプログラムを完成させたことも、迅速なシステム開発を可能にした一つの成果といえます。


優勝はNUT MAPの「津波避難経路シミュレーションシステム」

防災や観光、モビリティといった地域属性に根差したユニークなサービスアイデアが生まれました。審査員により、優勝と準優勝を決定しました。

審査員は写真左から順に、浜松市デジタル・スマートシティ推進部の水谷供子ともこ部長、一般社団法人コード・フォー・ジャパン フェローの今村かずきさん、本イベントの会場である起業支援拠点「FUSE(フューズ)」を運営する浜松いわた信用金庫の渡邉迅人はやとさん

優勝に選ばれたチームは……?

津波避難経路シミュレーションソフトを開発したNUT MAPチームでした!


データ連携基盤と繋がるデータを有効活用した点。そして、一般市民もひと目で分かる避難シミュレーションの形にできた点が評価されました。可視化されて初めて気付く危機も多くあります。避難上の課題を明確にできる点においても、優れたプロトタイプになりました。


そして準優勝チームは……?


スマートな観光案内サービスを考案した、KOISR Hamamatsuの皆さんでした!


観光地での笑顔の回数を評価項目に使うというユニークさが加点ポイントになりました。また、音声コミュニケーションにより、文字では難しい温かみあるユーザー体験を提供できることや、ユーザーに行動を促さずとも相互コミュニケーションを図れる点が評価されました。このサービスにより、観光地に笑顔の連鎖が生まれるかもしれませんね。


オーディエンスにも意見や感想を募り、総合的に評価を決定

サービス化を見据え、今年度いっぱいフォローアップが続きます

優秀と準優勝のチームには、浜松市をフィールドとするプロトタイプの検証支援や定期的に相談機会を設けるなど、2024年3月まで継続フォローアップを行います。

NUT MAPとKOISR Hamamatsuの皆さんも、「プロトタイプでは実現できなかった機能を作り込みたい」「普及率の低いスマートスピーカーの可能性が広がるサービス。引き続き取り組みたい」など、意気込みを見せてくれました。

また、本イベントを通じてデータ連携基盤の使い方が習得でき、日頃の業務上で使用する可能性が高まったという感想も。プロトタイプを短期間で開発できたのは、フラットな関係性のチームで自由に意見が言い合えたから、との意見もいただきました。

官民連携によるサービス開発の可能性が見えた本イベント。今後も浜松市では、こうした企画を通じ、データ連携基盤の活用による豊かなデジタル・スマートシティの実現を目指していきます。

文:浜松市デジタル・スマートシティ推進課

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